会社から解雇を言い渡された時、どうすればいいでしょうか?
1.解雇理由の確認と就業規則等の入手
解雇、つまり労働契約の解除(解約)は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効」(労働契約法第16条)となります。したがって、その解雇が法律的に有効であるためには、単に会社が解雇できると主観的に考えているだけでなく、就業規則に定められた解雇事由に該当する事実が存在しそれを第三者が確認し得る証拠が存在するなど「客観的に合理的な理由」があり、解雇に至るまでの過程で解雇を回避しようと相応の手続がなされたなど「社会通念上相当」と言える必要があります。
そこで、まず会社に「解雇理由証明書」の発行を求めることが必要です。労働基準法第20条第1項により「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない」とされ、労働基準法第22条第2項により「労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない」とされていますので、会社は法律上これを拒否することができません。
そして、就業規則等、解雇事由の記載された書類を入手する必要があります。通常、解雇事由は就業規則や労使協定に記載されていますが、多くの小規模企業ではこうした書類の存在を従業員に周知していない(労働基準法第106条違反)のが実情で、仮に法律上の周知義務を果たしていたとしても、一般の従業員がそれを知らないことは非常に多いです。解雇の有効性を争う場合には、こうした書面を使って就業規則等に記載された解雇事由が存在するか否かを検討することになりますので、できるだけ早く就業規則等の書類(又はデータ、写真でも結構です。)を入手することが重要です。
2.証拠の収集
次に、証拠の収集に努める必要があります。解雇の有効性を争う場合、合理的な解雇事由が存在するかについての真実はともかくとして、最終的に裁判所が認める証拠を揃えることができるかで勝敗や解決スピードが大きく左右されます。解雇の有効性を法的に争う場合、通常は裁判所に対して「従業員の地位確認請求」という請求をすることになりますが、その場合、以下のような主張を行うことになります。
- 自分がその会社の従業員であること(雇用契約書、内定通知、社員証、名刺など)
- 会社から解雇通知を受けたこと(解雇通知書、解雇理由証明書、解雇に関する電子メール等)
- 解雇について客観的に合理的な理由がないこと(就業規則等、人事評価書、勤務成績表、部門の業績データ等)
- 解雇について社会通念上相当な手続が行われていないこと(解雇までの経緯に関する電子メール等)
これらの証拠は、争う姿勢が会社に知れた場合に収集が制約される場合もあるので、いち早く入手する必要があります。
仮に訴訟手続を行わない場合でも、証拠がどれだけ揃っているかで、任意交渉の際の交渉力が違ってきますので、証拠の収集についてできるだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。
3.自主退職を前提とした行動や発言をしない
解雇とは労働者の意思に反して一方的に労働契約を解除(解約)することですが、自主退職とは労働者と使用者が合意して労働契約を終了することです。解雇が法律上無効と言えるためには、その前提として労働契約の終了に労働者が同意していないことが必要です。解雇の有効性を法的に争う可能性がある場合は、自主退職を前提とした行動(会社に退職金を請求する、会社に見える形で転職活動をする等)や発言(じゃあ辞めます、わかりました等)をしていると、後で争いになったときに会社が自主退職であるとの主張をし、その証拠を持ち出してくる場合があります。そうなると、解決までのスピードや解決の可能性にも影響が出かねません。
したがって、勢いや感情に任せて自主退職を前提とした行動や発言をするのではなく、淡々と冷静に受け身の姿勢を見せながら、一方で弁護士に相談しながら証拠収集を急ぐというのが適切な対処方法です。