会社が経営難だと、解雇されても文句はいえないのでしょうか?

必ずしもそうとは言えません。
  • まず、従業員を解雇しなければ会社や事業部門が継続困難になるなど、客観的に解雇が必要と言えるかが問題です。

以前あった事例では、「従業員への給与支払いが滞るほど苦しい」という説明をする会社がありましたが、労働審判では、この言い訳が全く受け入れられませんでした。

この事例での経営者は「資金繰りが苦しくて買掛金が払えないから給与を未払いにしてもらっている。それくらい苦しいのだから整理解雇はやむを得ない。」と考え、それで正しいと思い込んでいました。しかし、この経営者はそもそも支払の優先順位を間違っています。給料などの労働債権は、仕入代金や買掛金の支払などの一般債権より法律上の優先度が高く、むしろ先に払わなければいけないのです。また「経営が苦しい」と言いながら、従業員を解雇した後に、商品の買い付けと称して家族で海外旅行に出かけたり、役員報酬を増額したりする経営者もいます。つまり「経営難」というのが経営者の主観にすぎず、客観的に見て「経営困難」と矛盾する事実があれば、解雇の必要性は認められないことになります。

  • 仮に客観的に経営困難といえるとしても、それだけで解雇が有効とは限りません。

仮に経営困難であっても、配置転換を検討するなど、会社が解雇を回避するよう十分に努力した上で、やむを得ず解雇する場合には解雇対象者の人選が客観的で、対象者に対して手順を踏んで説明を尽くしたと言えない場合は、解雇が認められない可能性があります。

以下の点は、整理解雇の4要件又は4要素と呼ばれる判例法理で、解雇が有効かどうかは、これらを考慮して判断されると考えてよいでしょう。

  1. 人員整理の必要性
  2. 解雇回避努力義務の履行
  3. 被解雇者選定の合理性
  4. 解雇手続の妥当性

もし経営難で整理解雇だという場面に直面したら、これらの観点から検討することが必要です。